《悩める男子高校生》(作品 ID: 15094654)
作者:kaon (pixiv ID: 1735108)

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嘘だろうと思った。見間違いかとも思った。まさか自分がこのような場所で立ち止まるなど、とも思った。
「・・・きれい過ぎんだろ・・」
思わず零れた独り言は街中にあるポスターボードに向けられている。
いつからそれは貼りだされていたのだろうか。もしかしたら随分前からあったのだろうか。街中の広告に目を留める自分が信じられないと思いつつも、これを気にすることもなく速足で歩いていく人々の方が信じられないとも思う。
「・・・」
何がこれほどまでに自身の心を掴んだのか。それがわかれば、動かない脚の理由がわかるだろうと感じるのに、釘付けになっている視線が理由探しを許さない。
ほら、だって、こんなにも美しい人だ。私を認識しないなんてと、そんな選択肢は端からないわと言わんばかりに広告の女性は自分をじっと見つめていた。
ああ、けれどどうしよう。自分はただ一人に恋心を抱いていたはずなのに。恋しい相手の姿を広告の女性に重ね、欲を掻き立てられたなどと。

「おい!待て!キッド!」
おいそれと掴まってたまるものか。と思いつつも、つかず離れずを繰り返し、手が届きそうな場面でひらりと彼を躱す。キッドの現場で毎回繰り返されているこのやりとりを心の底から楽しいと感じながら、必死な名探偵、工藤新一の表情を伺う。
そうしてようやく中森警部らの気配が無くなったところで、脚を止めた。
「ぶっ!」
「名探偵・・・油断し過ぎですよ」
急に止まった自分の背に彼が勢いよくぶつかってきた。もしかして、警部たちを撒いていることにさえ気づいていないほど、自分を追うことに夢中になってくれていたのかと。そう思うと、キュンと胸が高鳴り。
ああ、自分も大概だな。そう感じながら、鼻をおさえる彼を見遣り声を掛けた。
「大丈夫ですか?」
「オメー・・・急に立ち止まるなよ・・・鼻、思い切り打っちまった」
「それは大変です。見せてください」
「い、いいよ!大丈夫だ!」
何故か焦る彼は自身の方に腕を伸ばし制止のポーズをとった。しかしまさか血が出ていたら、と思いその腕を掴んで無理矢理引き寄せれば、更に驚いている。
「おいっ・・!」
「鼻血は出てないですね」
「・・・おう・・」
驚いたときに鼻を押さえていた手が外れたため、出血の有無は簡単に確認出来た。しかし余裕がなさそうに見えるのは勘違いではないようで。先まで勢いよく自分を追いかけていたはずではなかろうか。
いまだ少しだけ赤い鼻をグローブをはめる指でひと撫ですれば、ピクリと揺れる肩が見えた。
「名探偵」
「なんだよ」
「何かありましたか?」
「なんもねーよ。オメーを追いかけてただけだよ」
月の光も届かない裏路地。表情を伺おうにもネオンの光を遮っているのは自分で。いつもなら追いかけっこの最中、地上に降りはしないのに。今日は何故か警部たちを撒いている間に地面に立っていた。
本来なら決まって追いかけっこの最後は「また会いましょう」などと華麗に去るはずなのだ。そして彼も仕方がないという表情と一緒に「次はぜってー捕まえてやる」と、去って行く自分を見送るはずなのに。
今日の名探偵は明らかに違ったのだ。
「キッド、逃げねーのかよ」
「ああ・・そうでしたね」
「そうでしたねって・・」
「名探偵は私の事を捕まえないのですか?」
「宝石を持っていない奴を捕まえられねーよ」
「ああ・・・わかっていらしたのですね」
こんなやりとりさえ、彼が焦りを隠しているように見えて心がもやもやとする。しかし、けれど。そう、確かに彼の言う通り今日の獲物はすでに手の中にはない。それは先程盗みに入った屋敷にあり、元々その獲物は屋敷から持ち出してもいない。宝石は目視した瞬間に違うと判断し、盗まなかったからだ。
それでも追いかけっこをしに来た名探偵。互いの常日頃を今日も倣っただけなのだろう。
「・・・とりあえずオメー、もう帰れよ・・。俺も捕まえる目的失ってるし、今日はここまでだ」
「・・・そうでしょうか」
「じゃあ、俺が先に帰る。だけどな・・・」
「なんですか?」
「オメーもこっちから帰れ。いいな?」
そう言った彼は裏路地の奥を指で示し、後ろに回り込んで自分の背中を押し始めたのだ。何故そのようなことをする必要があるのか。
「め、名探偵!帰りますから。私も大人しく帰りますからっ・・・!」
強引に押す彼に焦りを感じ、後ろを振り返る。そうすれば以前見かけたあの広告の巨大看板が路地を抜けた目の前にあるではないか。ああ、こんなところにも。
気付けば今夜は普段から人通りの多い街角に降りていたのだ。今は深夜に近いため歩く人間も少ないけれど。
恋心を抱く相手を目の前にしても、あの広告の主に目を奪われる。揺れる心がツキリと痛くなり慌てて目を逸らすが、どうしても名前も知らぬあの女性が脳裏に焼き付いて離れなかった。
押されるがままになった自分に対して彼が何を思ったかはわからない。広告から視線を外した時、名探偵は一瞬顔を歪ませていたようにも見えて。
けれど揺れる心をなんとか落ち着かせようと必死になっていた自分は、その表情に何の意味があったかを知ることもなく、押されていたことも忘れその日はいつの間にか一人で道を歩いていた。
気付かぬうちに地上に降りてしまったのは、きっとあの広告のせいだ。そう気づいたのは、家に帰る途中でまたあのポスターを見たからだった。

太陽の光に当たると明るい茶色に見える長い髪。その髪がさらさらと風に揺れ、軽やかに流れる毛先はキラキラと輝いている。カメラのアングルが変わり、映していた後ろ姿から正面へ回り込むと隠されていた細い輪郭と顔がはっきりと見えた。その映像はバストアップで固定され、唇は何かを紡いでいる。音声はないが、きっとブランド名を言っているのだろうと思った。そこにはブランドロゴが描かれていたから。言い終わると瞼を閉じ洗練された表情から一変して微笑んだのだ。そうしてプロモーションは終わった。
調べればそれは新規に立ち上げられた洋服ブランドのコマーシャルだった。しかしモデルになった女性の名前は一切明かされていない。そして自身が今見たプロモーションはネット限定のもの。地上波で見ることは出来ない。これを知ったのは偶然だけれど。
深くため息をつく。自分はこれを見て一体何をしようとしていた。いや、何をしていたのだ。
「はぁ・・・」
パソコンモニターの明るさしかない暗い部屋で股間に手を伸ばし、女性モデルと想いを寄せる彼を重ねていったい何を想像していたのだ。
一筋だと思っていた自分の恋心を自分の手で裏切っているのではないのか。誰にも知られる事は無いのに、罪悪感でいっぱいだ。
「このモデルが名探偵だったら・・・?」
そうなのかもしれない。そうであれば、欲を吐き出し萎えたソレにも言い訳が出来る。けれどそんな都合のいいことがあってたまるものか。
そんな後ろめたさを肯定するために自分の理想を押し付ける事など出来やしない。
似ているだろう。ほら、目元だって。輪郭だってそっくりじゃないか。脳裏でもう一人の自分が囁いている。
「くそっ・・!」
今はダメだ。何を考えたって墓穴を掘ってしまう。忘れよう。そうすればまた何事も無かったように日常に戻れるはず。そう思いながらティッシュボックスに手を伸ばし、数枚取り出した。欲を出し切ったのに、何一つ心は晴れやしない。何一つモヤモヤは取れやしない。
空しさを残したまま立ち上がり、バスルームに向かった。

日常に戻れるって言ったのは誰だ。うん、自分だ。そう感じながらうなだれ座り込んでしまった自分に対してクラスメイトがどうしたと言っている。
放課後、寄り道をしようと誘われた先での出来事だ。都心部に出てしまえばそのポスターボードはどこにでもある。よく考えればわかっていたことではないかと、頭の中で自分を殴るのだが。広告を見る度に思い出す彼の事。ああ、これはつまり、このモデルと彼を比較しているのではなく、ますます彼の想いを自覚するための試練なのだと無理矢理こじつける。
しかし、しばらくはこういった外出を控えようかと思わせるほどには、やはり心は痛かった。何故かって、本命である彼への想いが薄れてしまったのではないかという恐怖心があったからだ。
「おい、黒羽。腹でも痛いのか?」
「あ・・わりぃ。大丈夫」
「本当か?」
心配そうな友人の声が背中にかかる。仕方がない。今はそれに目を背け、誘ってくれた友人たちと遊びに行こう。あわよくば遊んでいる間に思考から女性モデルが去ってくれたらいいのだけれど。叶いそうにない願いを心の中で呟いた。

友人たちと別れ帰路に就けば、地元の駅近くでパトカーが数台止まっている。何か事件があったのだろうと思わせる物々しさを感じ近付けば規制線が張られていた。野次馬も多く、どのような事件があったかは窺えず、自身には関係のないことだからと立ち去ろうと目線を反らした時、その人だかりの中に見慣れた髪型があった。
そうか。そうしたらきっと殺人事件か。もしくは銀行があるから強盗でもあったのだろうか。彼がかかわる事件ならばどのような案件かは想像に容易い。
そうとわかれば彼は一体どのような表情をしているのだろうという興味が湧く。もちろんこれまで何度もそういった現場に居合わせてはいるが、大抵は自分がキッドの時だ。キッドと相対していない時の彼がどんなものなのかを知りたくなり、何食わぬ顔で人々の間をすり抜け近付いた。そうすれば、彼の背中付近に立つことが出来たのだ。
気配を消してジッと見つめれば、刑事と何かを話し合っている。見えるのは横顔だけのため、唇の動きは読み取りづらいが真剣な表情は窺えた。見覚えのある表情。だけどその見覚えのある表情もほとんどは彼が小さな姿の時だった。思い返してみれば、知らぬ間に彼は元の姿に戻っていて。そして元の姿でキッドの現場に来た彼を祝福したものだ。そうだ。その時に名探偵への恋を自覚したのだ。ほんの少し前の事だけど懐かしいなあと思いながら、再度見つめればスマートフォンを慌てて取り出していた。と思ったら、急に彼がこちらに身体を向けたのだ。
「えっ」
思わず声が出てしまったが、よくよく観察すれば何かを落としたのか地面を見ている。何を落としたのかはわからないが、自分も自然と足元を見てしまった。そうすれば、小さなサッカーボールがコロコロ転がりながら自分のつま先に当たって止まった。まさか。そう思い、拾い上げれば目の前には名探偵がいたのだ。
「わっ!」
「あ・・すみません・・それ、僕のです」
数メートル先に居たはずの彼が突如目前に現れ思わず驚いた声が出てしまった。普通なら人の気配には敏感なはずなのに、油断していた。とはいえ、今はただの野次馬の高校生。一般人を装うのは慣れている。
「あ、これ、君の?」
「はい。ポケットからスマホを出した時に引っ掛けて落としてしまったようで。拾ってくれてありがとう」
「うん、どういたしまして。はい、どうぞ」
小さなボールを指で摘まみ彼に差し出せば、両手を出して大切そうに受け取った。安心したような笑顔で再度ありがとうと言われたそれにドキッとする。やっぱり好きだなあなんて自覚すれば、ぺこりとお辞儀をして去って行った。
しかし彼がそこまで大切している小さなボールのストラップには心当たりがない。ふといつも一緒にいた彼女を思い出し、嬉しかった気持ちが瞬時に嫉妬へと切り替わる。ああ、なんて単純。
「はぁ・・・」
大きくため息をつけどモヤモヤした心はとれない。とりあえず真剣な表情や笑顔を見られたのだし、やはり彼への気持ちは恋心なのだと改めて思えたのだから。そう納得して彼が携わる現場を後にした。そういえば、高校生として相対したのは初めてだったなあと思いながら現場に背を向けた時、彼がこちらへ振り返っていたことには一切気づかなかった。

月が真上に差し掛かろうとしている。そろそろ帰ろうかなあ、なんて後ろを振り返るも誰もいない。気配が無いのだからわかるだろうと自分に言い聞かせるけれど、最後まで追ってきてくれなかった彼に対して少しだけ不貞腐れている。勝手に落ち込んだって何の解決にもならないのに。
最初はいつものように定番の追いかけっこ。けれど警部たちを撒いたと同時に彼もいなくなっており。あれれ、なんて思いながらも他のルートから追いかけてくるかもしれない。そんな期待を込めて屋上に降り立ったのだが。まあ、彼はやはりいない。
唇を尖らせても仕方が無いけれど、自分を捕まえることを放棄した彼に対して不満が募るのだ。大変勝手だけれども。
「はぁ・・・帰るかなぁ・・・」
夜空を仰いで月を見る。夜風は気持ちいいなあと感じたと同時に、あのプロモーションビデオを思い出し。いけないいけない、忘れるんじゃなかったのかと頭を振りグライダーの準備をすれば、後方でドアが開く音がした。
「キッド・・!」
「はぁ・・やっと追いつきましたか名探偵」
安心と嬉しさ。遅れたことに対しての呆れも少なからず感じていたのが思わず口を衝いて出てしまった。
グライダーを操作する手を止めて振り返ればしかし、想像していた彼とは違い息を切らしていた。なんだ。やはり必死になって追いかけてきてくれていたのか。自分の件を放棄してさっさと帰路に就いてしまったのかと思っていたが、息を整えるため肩を揺らす彼を見て安堵した。
それならば労う必要があるだろうと、深呼吸をしている彼に近づく。
「オメー・・まだいたのかよ・・はぁ・・」
「お待ちしていたのですよ。大変でしたね」
「嫌味かっつーの・・・」
「いえいえ、途中で帰られたのかと思って。とても寂しかったのですよ」
「・・・いや、なんつーか、オメーは逃げちまえばよかったとは思うんだけどな?はぁ・・・全速力で走ったからあちぃー・・」
手で首元をあおりながらネクタイを緩めた彼は非常に油断をし過ぎているとは思わないか。うん、そうだなと問いかけたもう一人の自分も同意し、ふと妙案を思いつく。
ネクタイを緩めた彼はシャツの二個目のボタンも外し、微妙に鎖骨までも晒している。そこにくぎ付けになった目線は首を流れる小さな滴を辿ってしまう。
だから妙案なのだ。彼に気付かれぬようにスマートフォンのカメラを起動し、胸ポケットへ入れる。レンズの部分はもちろん彼からは見えない。抜かりはない。当たり前だ。
そうして別のポケットからは薄いハンカチを取り出し、彼の首元にあてた。
「っ・・・びっくりした」
「汗を、と思いまして」
「あ、ああ・・・えーと自分でやるよ」
「見えないでしょう?私が拭いて差し上げます」
「い、いやいや・・」
月明かりと困り顔の彼。そしてその彼に自分の影が重なり。ゾワゾワと背筋を這うこれは情欲か。
優しく首元を拭き、鎖骨を撫でればくすぐったいのかピクリと揺れる身体。
「も、もう大丈夫だから、キッド」
「いえ、もう少し」
嫌なら逃げればいい。けれどされるがままで逃れようと身体を動かすこともしない。それとも彼ももしかして。そんな都合のいい思考が芽生え始めたが。
「す、ストップ!ってか違う!こんなことしてる場合じゃねぇ・・・今日は疲れたからここまでだ。とりあえず宝石寄越せ。返しといてやるから」
そう言いながらハンカチを持つ手を掴まれたのだ。早口は焦りだろうか。それともこの状況に気まずさでも感じたのだろうか。
ただこれ以上は進められない。怒らせる可能性もある。
「そうですか。汗を冷やして風邪をひいたりしないでくださいね?」
「・・・なんか・・・やたら優しいな?」
「いつもですけど」
僅かながら頬が赤いのは気のせいではない。彼は汗を拭われたことに恥ずかしさを感じたのか。ああ、なんて可愛らしい。あと少し押せばもしかしたら自分に恋をしてくれるかもしれないなあと思い。
期待で胸が高鳴り、口角が上がる。しかしとりあえずと思い、彼と一歩だけ距離を取った。駆け引きは徐々に、焦りは禁物と感じたから。
「ってかハンカチも寄越せ。洗濯する」
「いえいえ、大丈夫ですよ。このくらいは私が」
「いやいや、俺がやるから」
丁重に断ったつもりだが彼はムキになりハンカチを奪おうとする。いやしかしこれはダメなのだ。渡してはならない。それならば宝石だけ渡してさっさと退散してしまうしか道はなく、掴もうとする手をひらりと躱し、思い切り距離を取った。
「キッド!」
「では名探偵、宝石をよろしくお願いしますね!」
慌てて、しかしそうは見えぬよう紳士に屋上を後にした。ひとまず思いついた妙案は達成された。と思う。待てと叫ぶ彼の声が夜空に響いていた。

自宅に帰り、急ぎ白い衣装を脱ぐ。けれどなかなかボタンがうまく外れてくれない。それに股間部もきつく、脚の動きすらままならない感じだ。これでよく無事に帰ってこられたと思う。
「っ・・・」
不格好だ。だけど誰も見てはいない。膨らんだ股間が下着に擦れてもどかしく、急いで床に膝立ちをする。早く脱いで、スマートフォンに記録した映像を流して、そしてハンカチを。
今自分の挙動はとても荒々しいと思う。だけど、膨らんだ陰茎を取り出して映像の中の彼を堪能しながら達したい。それに香りをプラスして。
「んっ・・・」
ようやく触れることのできた陰茎は熱く滾っている。ゆっくり擦るなど悠長なことは出来ず、激しく上下に擦る。床に置いた携帯端末の再生ボタンをタップすれば、困った表情の彼。徐々に頬が赤くなる様子はその場では見ていなかったから心がキュンと疼き。それを見ながら次にハンカチを取り出す。自分で使っている柔軟剤の香りに混ざる彼の汗はなんて極上なのだろう。素直に渡さなかったのはこれのため。甘くて少し酸っぱい。体臭がこんなにも欲を煽るなど考えてもいなかった。
「っ・・めいたんてい・・・」
荒くなる呼吸の中で思い切り彼の香りを吸い込み、ループ再生した映像を見遣る。鎖骨に触れられた名探偵が一瞬潤んだ瞳で自分を見ていて、ドキリとまた鼓動が跳ね上がった。知らなかった。そんな表情をしていたなど。
「あっ・・」
亀頭を指で擦り上げれば、あっという間に達したのだ。床にびちゃりと落ちた精液の量は多く、掃除が大変だと考えてももう後の祭り。けれど別にいいと思えるのはやはり好きな人は彼で、これほどに欲情するのも名探偵一人しかいないと感じたからだ。それが証明できたことへの安心感の方が大きかった。
「はぁ・・・名探偵・・」
熱い吐息は部屋の中に溶けた。

自分、変態じゃないか。ふと、そう思ったのは次の日の朝。もちろん誰にも知られることの無い行為だけれど、再び彼に対する罪悪感でいっぱいになってしまった。
こっそり盗撮。ハンカチには彼の汗を染み込ませて。そして自慰。
「・・ぎゃー!めちゃくちゃだめじゃーん・・・!」
起きようとしていたけれど、咄嗟に頭を抱えて布団の中に逆戻りしたのだ。いやしかし待て。自分がそのようなことをしたなどとやはり誰も知らない。そして自分から誰かに言うことも無い。ましてや本人には。たとえ変態でも、それを知られず紳士に対応していれば何も変わる事は無い。いや、変わって欲しい現状はあるが、それとこれは違う。告白を先延ばしにし過ぎていたせいで言うタイミングを散々逃し、これじゃあ何も言わずに終わであろうこの現実は変えたい。ではいつ言うのかと自分に問いかけるがしかし、答えはないまま。
「・・・起きよう」
モヤモヤ悩んでいても仕方がない。次のターゲットの当てが付いたためそれを調べて気分を変えよう。そう思い、ベッドからやっと抜け出した。
そうしてパソコンを立ち上げカタカタと調べ物をしていくうちにまたあのプロモーションビデオが現れ思い悩む羽目になるとはつゆ知らず。

あれから数週間が経過し、本日も怪盗業。獲物は大外れで持ち主には疾うに返却済み。追いかけっこも通常通りになされ逃げてきた。しかし降り立った場所が悪かった。
「はぁ・・・」
ため息をつきながら背後へ目を向ければ、自分を思い悩ませる巨大看板。件の女性がどんと目の前に広がっており。
ハンググライダーで飛行している時に気付けばよかったものを、本日は無風であまり遠くには飛べずにいた。だから眼下に見える屋上に降り立っただけなのだ。郊外だから油断したのか。いいや、宣伝などどこでも行われている事だ。
奇麗なのに。澄んだ瞳なのに。これを純粋に見られなくなっている自分に厭きれ、想いも伝えていない彼への罪悪感が募る。こんな男でも好きになってくれるだろうか。実は好きな人がもう一人いるのだけどいいのか、なんて聞けるわけも無く。それはあまりにも不誠実だ。
あれこれ考えると、またため息が出てしまう。しかしこんなところで呆けていても仕方がない。再度ハンググライダーを操作しようとベルト部に手を掛けたところで。
「どうしたキッド」
「っ・・・!」
急に声がかかったのだ。名前を呼ばれつい驚いてしまった。まったく気配を感じなかった。きちんと逃げ果せたと思っていたけれど、どうやら居場所を突き止められたらしい。
彼からはこの巨大看板は見えていない。だからこそ誤魔化すように、咄嗟に目線を名探偵に向けたのだが。
「何を見ていた?」
もしかしたらずっと何かを見つめる自分を、彼は知っていたかもしれない。ただただ看板を見ていたからと言って自身の想いが明らかになることも無いだろうに。
「・・・夜空を・・見ていました」
そう言って、核心に触れぬようにしてしまうのだ。もしかしたら好きという気持ちすら信じてもらえなくなるかもしれない。そんな恐怖が芽生えてしまったから。
自分の言葉をどうかそのまま受け取って。振り返らず、こちらだけを見ていて。焦る心が身体を突き動かし、彼の方へ足を動かす。けれどその間に彼は看板の方へ顔を向けてしまい、咄嗟に名前を呼ぶ。
「名探偵・・・!」
「ぎゃっ!」
「え?!」
しかし彼は何故か変な声を出し驚いていて。互いに不自然な格好で固まることとなったのだ。ただ早く立て直したのは彼の方。素早くこちらに顔を向け、キッと睨みながらドスドスと歩いてくる。
「ど、どうされましたか?!め、名探偵!」
その迫力は相当のもので、元々焦りを感じていた気持ちが吹き飛ぶほどには顔が怖い。
「オメー!それ!」
そう言いながら広告に指をさした名探偵だが、途端動きを停止させ、固まった。
「え?・・・え?名探偵?」
「ゴホン・・・なんでもねー・・・マジでなんでもねぇ・・・夜空を見てたんだよな?な?」
「え?あ、はい・・・」
「なら、よし。うん、大丈夫。オメーも帰れ。俺も帰る。それでよし」
なんだかよくわからないことになってしまった。居ても立ってもいられず広告を見る彼の意識をこちらに向けようとした矢先のこと。なぜか名探偵の方が気まずそうに言葉を紡いでいて。しかもなんだか表情もぎこちなくて。ロボットみたいに首がギギギッと鳴ったような気がする。
頭の上には疑問符がたくさん飛んでいる。けれど話は逸らすことは出来たようだ。判然としないままながらも、一安心した。
が、このままでいいのかともう一人の自分が問いかけてくる。急に彼が不自然な言動をした理由を知りたくなったのも事実。
「あのー・・・名探偵、その・・・何かありましたか・・・?」
「なんもない。だから帰ろう。な?とりあえず、ほら、グライダー開いて」
「え、ちょっ、名探偵?!」
素早く自分に近づいた彼は、ハンググライダーのスイッチを探し始めたのだ。飛行船の時を思い出すなあなんて暢気にしている場合ではない。
「め、名探偵!わ、わかりましたから!」
「・・・」
「はぁ・・・あわてんぼうさんですねぇ・・」
「・・・見送ってやるから、ほら」
今日も捕まえなくていいのかなんて悠長に問う暇も与えてもらえず、仕方なくグライダーを開けば身体がほんの少し揺れた。ああ、風が吹いてきたのかと思いながら彼を見る。そのバックには巨大看板。
「あれ・・・?」
「ほら、夜も遅いからさっさと帰って寝ろ」
「いや、名探偵もですよ・・・」
「わかってるって。じゃあな」
「・・・はい、では」
きちんと応答しながらも、なんだか不思議な感覚に襲われる。だけどその理由はわからないまま急かされ、屋上から飛び立ったのだった。

ふと疑問を抱くようになった。思い返せば、不自然な行動は今回に限らずその前もあった。何故か自分の背中を強引に押し帰る方向を指定した彼。そしてそこには必ずあの広告があって。
「・・・まさかなぁ・・・」
でもそれなら自分にとっては都合のいい話。そして欲情した理由も道理にかなう。けれどそれなら何故最初に気付けなかったのか。あとは何故彼がモデルをすることになったのか。
しかし名探偵とあのモデルがイコールであるという確信を得ることは出来なかったため、あの日以降探りを入れるようになった。しかしなかなか彼と出会うことが出来ない。彼が通う帝丹高校の前で待ってみても、帰るであろう時刻に家の近くで待ち伏せしてみても、会うことが出来ないでいたのだ。
もしかしたら難事件を請け負って家を空けている可能性も。だからこの一週間何も音沙汰がなかったのかもしれない。ひとまず今日も同様に彼を待ち伏せしてはみるが、これで出会えなかったら一旦この計画を取りやめなければならないと思った。そんな諦めの境地の中、今日も帝丹高校の前で待ち伏せをしていた。もちろん怪しい人物ではないという空気感は出しておきながら。
そしてようやく待ちに待った瞬間がきた。校門から出てくる彼の姿があったのだ。友人たちと一緒に歩き、こちらには気付かぬまま去って行く。ああ、よかった。ちゃんと彼は居た。
それならば後を追ってみよう。可能性は低いかもしれないが何かわかるかもしれないと期待して。

友人たちと話しながら帰路に就く彼は途中スマートフォンで誰かと連絡を取っていた。何か焦ったような表情が見えて気になったが、唇の動きも端末に隠れて話の内容まではわからなかった。きっと事件絡みなのだろうなあと思いつつ、よくよく見ればその端末についていた筈のストラップが無い。ポケットに引っ掛けて落とした時に紐まで駄目にしたのだろうか。それともあの小さなボールを繋げる金具でも失くしたのか。言ってくれれば直すのになんて思えど、いまだそんな仲ではなく。とりあえず気を取り直し追跡を続行すれば、一人、また一人と友人たちと別れていた。そうして彼一人となったため余計に気配を殺す。何か手掛かりがつかめればいいのだけど。そう思いながらついて行けば、彼に話しかける女性が現れた。
「あれ・・?」
あともう少しで彼の家。そしてよく似た風貌。ああ、母親だ。しかしなんだか喧嘩をしているような様子だ。
都合がいいことに隠れられる電柱を発見できた。そこに身を寄せて彼と母親の会話に耳を傾ける。
「だからーお願いよー新ちゃん!」
「もうヤダっつってんだろー!あれはもうやらねぇって!あれきり!」
「それが取引先の人がどうしてもって言うから断れなくて!一生のお願い新ちゃん!」
「それこの前も聞いたっつーの!」
「じゃあ二度目の一生のお願いー!困ってる母を助けてよー!何回もお願いしてるのにー!」
「二度目も何もないっつってんのに・・・・はぁ・・・」
どうやら母親の無茶ぶりに付き合ったらしい。しかしそれがどのようなものだったのかはこの会話ではわからず仕舞いだ。とりあえず考えるよりも会話の内容をきちんと聞いておこう。
「本当にこれきりだから!ね?お願いよー新ちゃん!私の友達はお披露目パーティーをすっごーく楽しみにしてるの!だってやっと夢が叶ったって泣いちゃったくらいなんだもの!それにこの前は新ちゃんが引き受けてくれてとても嬉しかったって!私の友達のためにもお願いよー!」
「・・・はぁ・・・マジであと一回だからな。それ以降はプロに頼めって言ってくれねぇと俺も行かねぇぞ」
「本当に?!やったわー!ええ!もちろん約束するわ!」
飛び上がり喜ぶ母親を呆れ顔で見る名探偵は、大きなため息をひとつ。しかしこれで予想は確信に変わったかも知れない。でも実情を見なければ、自分の想いにも決着をつけることは出来ないと思い、彼の母が話していた日時を頭にきちんとインプットした。

大きな収穫だ。そう思いながら覚えておいた日時に訪れた会場は大きなホールも設備されているホテルだった。来場者のほとんどがスーツやドレスで着飾っており、盛大に開かれることがよくわかる。大きな荷物を抱えるのはカメラマンか。メディアにお披露目となると彼がかかわるにしてはあまりにも油断が過ぎるような気がしてならず。
とにもかくにも内部に侵入し、事の真相を確かめよう。もしかしたら探偵として雇われただけなのかもしれないし。それもそれで事件が起こる予言にしかならないが、そうなった時には自分がいる。何かが起こったならば危険を回避するため彼に助け舟を出すこととしよう。
そして招待客と思われる人々に紛れ、ホテルの中へ入っていった。

警備の甘さに若干不安が募り始めてはいるが、招待状を複製した自分の方が一枚上手だっただけだろう。そう思いながら、会場の隅に立ちざわめく人々を眺める。
彼の母の友人はブランドを立ち上げプロモーションを成功させた。出席者に配られたパンフレットを見たところ、お披露目と祝賀会を同時に行うようだ。今日のために起用されたモデルは数名いるらしいが、どれも有名な名前ばかりで彼が登壇する理由はなさそうに思える。プロに頼めと言っていたし、やはり事件絡みなのだろうか。ますます不可解だ。
事実を知りたいなら楽屋にでも侵入してしまえばいい。けれど、例えば本当に彼がモデルを務めていたなら表に出すことを無理やりにでも止めてしまうかもしれない。そうしたら今日のパーティーに迷惑がかかる。いや、それなら代役という手を使うことも。その代役を誰に頼むかなど考えてはいないけれど。誰にも聞こえぬよう唸りながら悩んでいれば会場にアナウンスが流れた。ああ、始まるのか。カメラマンが指定の場所に移動し、招待客は着席をしている。壁際に立つ者も少なくはないがほとんどがスタッフだ。まあ、自分もその[[rb:体 > てい]]で侵入しているわけだが。
とにかく見届けようか。あの姿が見られるのなら嬉しいし。事件絡みであってもこんな目立つ場所では何も起こらないだろうし。そう思いつつ、舞台の方に目を遣った。

照明が落ち、スポットライトを浴びながら登場したのはプロモーションに出ていた女性モデルだ。
別人のように見える。単純に、純粋に思ったことだ。あの女性が彼ならば、メイクの技術は自分を超える。変装するために培った技術をグレードアップさせるため手解きを受けたいほどに。
でもそうだな。ふと眼を観察すれば外眼角へ続くカーブは彼そのもの。瞳の色はカラーコンタクトだろうか。舞台と招待客の照明の差が大きく、きちんとは確認できない。
女性モデルは清楚なワンピースの裾を靡かせ颯爽とモデル歩きをしている。足首が少ししか見えず体型も隠されているために、名探偵であることはわからなかった。ある程度距離も離れているし、いつも見つめていた瞳で確認をとろうとしたのだけれど。
そしてその女性がくるりと一回転しカメラや招待客がいる正面を向いてお辞儀をひとつ。そして顔を上げホールを見渡していた時、こちらに視線が飛んできた。
「っ・・・」
一瞬目が合ったような気がしたが、女性モデルはそのまま舞台袖へ捌けていった。先も思ったように照明の差は大きい。ホールにいる一人一人の顔を視認することは難しいと思われるのだが。もしかしてバレたのだろうかと焦りで心臓がバクバク言っている。
再登壇はおそらくショーの最後だろう。このまま見続けることに意味はない。募る焦りは急速に楽しさに変わり始め、楽屋へ侵入してしまおうかなんて先と違うことを思う。
自分なら簡単に潜り込むことは出来る。だから大丈夫だろう。そう思い、その場を後にした。
しかしスタッフに化けて侵入してみた楽屋にもあの女性モデルはおらず、忙しないステージ裏で誰かに聞くことも出来ずにホールへ逆戻りすることとなった。誰もいない一人になれる場所はどこだろう。ふとそんなことを思い、ホールの内部を見渡す。暗がりで身を潜められる場所は機材を管理しているところ。急に思いついた心当たりを手掛かりに、急ぎ足を向けた。

予想通り、人の行き来も少ない狭い廊下と小さな階段を上った先に身を潜めている人間を見つけた。そこは小部屋で様々な機材が所狭しと並べられている。物置部屋ではあるのだろうが、ホールを眺められる小窓もあり、ドアは開いたまま。それはまだ自分には気付かず、ホールを見つめていた。こんな場所で一体何をしているのか。
予想は当たったのだ。このような場所にショーに出るモデルは来やしない。並べられている機材も今回の舞台では使用されないものばかりなのだろう。だからこの時間は専門スタッフが出入りする様子も無い。
開きっぱなしのドアを抜けモデルが立つ場所へ近づく。そうすれば急にこちらに気付き慌てふためいているではないか。拙い現場を見られたという表情をしながらその場を去ろうとするがドアは一つしかなく、しかも自分がそこを塞いでいるためすり抜けることが出来ない。
「な、なんですか・・・こんなところに何の用です?」
知らぬ女性の声だ。どうやら変声器を使用しているらしい。こんなに近いのに、ボイスチェンジャーをどこに仕込んであるかわからないくらい巧妙に隠されている。
「バレてますよ」
「な、何がでしょう?スタッフさん・・・?でしょうか。自分の持ち場にお戻りになられた方がよろしいかと」
じりじりと近付き被られたマスクの粗を見つけようとするが、女性、いや彼も見破られまいと必死に後ずさりしている。けれど彼の後ろは小窓。逃げる場所も隠れる隙間もこの部屋には無く、早くネタバラしでもしてしまえばいいのにと、小股で近付いていく。
「誰か呼びますよ」
「いいですよ?」
そんなことは出来るはずがない。出来るなら疾うに大声を上げて警備の人間などを呼んでいただろう。
「別に隠さなくてもいいのでは?」
「だから・・・何の話でしょう?」
プロモーションで流れていた姿と全く一緒の女性。モデルを引き受けた現場ではこの声で過ごしていたのかと思うと、なんだか妬けてしまう。自身の知らぬ間に大きなプロジェクトにかかわった彼。それを知らなかったことに苛立ちさえ覚えて。
あと数歩で掴まえられる距離になる。その間にでも「バレちまった」とか言ってくれたらいいものを。
と、その時、全速力で自身に向かって走ってきたのだ。
「ちょっ!」
そして片腕を掴まれたと思ったら後ろに締め上げられ小窓の方へ押される。そんなことが出来るのはやはり彼しかいない。そして逃がしてたまるものか。そう思い、まだ自由な腕を使って彼の手首を掴んだ。
「っ・・・!」
心の中で悪いと謝りながらあっという間に形勢を逆転させ、先まで彼が覗いていた小窓に押し付けた。痛くない程度の力で身体を密着させて囲えば、顔を歪ませていて。強すぎたかもしれないと咄嗟に力を緩め表情を覗き込めば、ほら、やっぱりよく知っている顔じゃないか。
「・・・どうして」
「興味、かな」
「・・・はぁ・・・」
「声」
とにかくこの場では誤魔化す必要も無い。声と言ったのはその意味を込めたもの。汗を拭いた時のような近さに鼓動が早くなるが、とにかく今は正体を見せて欲しいと視線で伝える。そうすれば彼はボタンをひとつはずし、隠していたネックレスのボタンを押した。ああ、そんなところにあったのか。
「知られたくなかったぜ・・・」
青色が隠された茶色い瞳。マキシ丈のシャツ型ワンピースは鮮やかなホリゾンブルーを地にインディゴを差し色にした前立てがある。ウエスト部には細い革のベルト。それがアクセントとなり、舞台上でくるりと一回転した時は大変奇麗だった。女性受けしそうなデザインは確かに話題になるだろう。これを着た彼を見たデザイナーは鼻が高そうだ。
そう思うと、メラメラとしたものがこみ上げてきて。しかし落ち着けと自分に言い聞かせる。
「奇麗ですよ、とても」
「からかうなよ」
「いえ、本当に。ポスターを見て立ち止まってしまうくらいには」
「・・・」
彼にとっては誇れるものではないのだろう。この対応を見ればわかる。母親に頼まれ仕方なしに協力をしてあげた。だから誰にも知られることの無いよう秘密裏に動いていて。しかし、自分にはバレた。大層気まずいのだろう。だからこそ。
「本当に、奇麗です。あなたにずっと恋心を抱いていたけれど、ポスターを見てあなたと同じように恋心を抱いてしまって。とても悩みました。悩んで苦しくて・・・」
「ちょっ、え?!待て待て!急に?!え?!」
彼の慌てように疑問符が浮かぶ。どうかからかっているとは思わないで欲しいと誠実な気持ちを伝えたはずだ。勘違いをしてほしくは無くて、精一杯に言葉を尽くして。
あれ、待てよ。自分は今何と言ったか。
「あっ・・・」
ハッとし思わず掌で口を覆うが、言った言葉はすでに彼の耳に届いている。頬が熱くなり、この場から逃げたくなる衝動に駆られたがどうにかそれを抑え込んで。だって彼は自分以上に顔が真っ赤になっているから。
「・・・キッド・・オメー・・」
「・・・本当ですよ。全部本当です。あの広告のモデルがあなただったらいいのにと何回思ったことか」
「・・・そうなのか・・・そっか・・・えーと・・・そっか・・」
参ったと聞こえた言葉はとても小さく。そしてズルズルと力が抜けたように床にしゃがみこんでしまった。それじゃあ埃塗れになってしまう。
「名探偵、座っちゃだめですよ・・汚れてしまいます」
「いや、うん、そうだな・・そうなんだけど・・・えーと・・・どうしたらいいのか・・わからなくて・・・」
そうだ。彼は突然の告白に動揺しているのだ。そしてノーとは言わないということは。少なくとも彼は自分が抱く好意に嫌悪感はない。
「名探偵」
しゃがみこんでしまったから見えるのは頭頂部だけ。だけどサラサラと流れた髪の隙間から覗く耳は真っ赤ではないか。嫌悪感は無いと思ったそれ以上の反応に気持ちは高ぶり始め。
「名探偵、顔を・・見せて」
「・・・キッド・・」
躊躇いながらも顔をそっと上げてくれた彼の瞳がほんの僅か潤んでいる。鼓動が途端早鐘を打ち始めた。駄目だ。この衝動は許されない。けれど彼は告白を受け止めていてくれている。だからどうか。
「返事を・・・聞かせて、名探偵」
「・・・急すぎだぜ・・・だけど俺も本当は・・キッドのことがずっと好きで・・・」
彼の言葉は余すことなく耳に入り、身体中を巡る。もしかしたらと期待した気持ちは疾うに超え、身体は勝手に動き彼の腕を掴んだ。
「あっ・・・ちょっと・・!」
慌てた彼の言葉など聞いてやるものか。今すぐ抱きしめて、今すぐ唇に噛み付いて、今すぐにでも沸騰した情欲を彼に。
細い腰を抱き寄せ彼の背を小窓に押し付ける。彼の唇に触れそうな距離まで顔を近付け瞳を見つめれば、眉根を寄せ困惑顔。ただ視線を逸らすことはしない。
「名探偵・・キスしていい?」
「っ・・・いい・・よ」
「それ以上の事も?」
「そ、それは・・この格好じゃあ・・・やだ」
可愛すぎるとは思わないか。そして自身が望んでいる意味を理解している。どうかこのお披露目パーティーが終わるまでは我慢していて。そんなことを言うから口紅が塗られている唇に噛み付いた。
「んっ・・・!」
なんて柔らかいのだろう。妄想した回数なんて馬鹿馬鹿しいほどにふかふかで、いつか直接触れたいと思いながらたくさん自慰をして。ああ、もっと身体の隅々まで貪りつくしたい。そんな欲求が溢れてくるけれど、彼はパーティーが終わるまでは待てと言ったのだ。強引に事を進めては、今日を駄目にしてしまう。
踏みとどまる術を探さなければとあれこれ考えている間に、背に回された彼の腕が自分をきつく抱きしめ返してくれる。ああ、なんて可愛いのだろう。彼も我慢の限界を迎えてしまえばいいのになんて思ってしまう。でも、こんな場所を初めての場所にするにはあまりにも大変だろう。
リップ音を何度も響かせて小さく柔らかい唇のあちこちに触れていたけれど、表面だけでは足りず咥内に舌を侵入せる。そうすれば彼も熱い舌を絡ませてきた。
「んっ、んっ」
彼のこういう声を聞くのは初めてで、耳がとてもくすぐったい。段々背筋には痺れが走り始め。もっと聞かせて。そんな風に思えば、舌が勝手に咥内をぐしゃぐしゃにする。歯列をなぞり上顎を舌先で突けばビクッと身体が揺れ、彼の咥内は唾液でびしゃびしゃ。それをじゅるっと吸い上げれば、背を叩く手が息苦しいと知らせていた。
「ぅんーーっ!」
「はっ・・・」
嚥下した熱い唾液が食道を通る気がする。彼の体液が自分の身体に入り込んでいるのだ。それが我慢していた快楽を底上げしてしまって。
耐えろ自分。そうやって自身を説得していれば、彼がギュッと抱き着いてくる。
「はぁ・・キッド・・・飛ばし過ぎだっつーの・・・苦しかった・・」
そうだよな。初手で無謀なことは出来ないのだ。そう思うことで、なんとか暴走しそうな欲を抑え込み。
「ごめん名探偵・・・」
「ん・・・別に・・いいけどよ。あと今更なんだけど・・」
「ん?」
「それ、オメーの素顔?」
「ああ・・そうだよ」
はぁとため息をつき、大きく深呼吸をした彼は身体を離してじっとこちらを見つめる。頬はまだ赤く、瞳も潤んでいる。ああ、この瞳をきちんと彼の色で見たい。
「なあ、このパーティー終わったら」
「・・・待っててくれ。さすがに母さんの頼みは途中で放棄出来ねぇし、ここのホテルの部屋で・・・待ってて・・」
「っ・・・!名探偵!」
極上の誘惑だ。続きを望んでいるのは自分だけではないのだ。嬉しさに思わず彼の両手を握れば、これだと鍵を渡せないと文句を言う。だけどますます顔を赤くした彼の小言は何の嫌味も感じない。
「終わりの時間は・・・まあ知ってるよな」
「うん」
「くくくっ・・・いつの間にかキッドらしい言葉の使い方じゃなくなってるぜ?」
「いいだろ。もう恋人なんだから」
「こっ・・恋人・・・うん、まあ、そっか・・・そうだよな・・・」
その単語に照れている彼は、部屋をぐるりと見渡して心を落ち着かせている。そうしてまた戻ってきた視線は、新しい関係に納得していて。
「キッド、手」
「ああ・・・ごめんずっと握ってた」
「ううん、それは別に大丈夫」
解放された手をオレの頬に添えて、唇の端を親指でなぞる。なんだろうと思い、首を傾げれば「口紅」と彼は言った。
「なんかエロいな。オメーの唇に赤いリップ」
「・・・今すぐここで襲って良い?」
「これ以上は・・・我慢してくれ・・・」
苦笑した彼は再度深呼吸をし、とにかく体裁を整えて戻らなければならないと諭した。それならば自分も手伝おう。そう思い、ポンッと様々な道具を出す。
「わっ・・!って・・・なんでそんなもん持ってんだよ」
「なんとなく?」
「まあいっか。手伝ってくれるんだ?」
「うん、乱しちゃったのはオレだし?」
「言い方・・」
彼はふふと笑って瞼を閉じる。なんだか急に信用されたなあと思うけれど、だって恋人だもんなと心を許してくれる彼に嬉しさが募る。だとしたら気持ちに応えようと化粧道具を広げた。

「器用だな」
ようやく冷静になれた自分に瞼を閉じた彼が言う。汗を拭きパウダーを乗せてからアイシャドーを塗っていると、ほんの少し無言だった時を動かし始める。
「まあ・・・わかるだろ?」
「くくく、まあな。誰かに化粧したことは?」
「ねぇよ。ただまあその国に馴染めるよう全身に色々塗った子はいたなぁ」
「あはは、懐かしいな」
そして化粧は終わったと告げ、ウィッグを整え始める。そうすれば彼は瞼を開け、じっとこちらを見た。この女性モデルが彼だとわかった途端、もう工藤新一にしか見えない。調子の良いものだと心の中で苦笑したけれど、やはり好きになる人は一人しかいなかったのだと知ることが出来てホッとしているのも事実。
「なんでモデルを?」
「母さんの圧に負けただけだ」
「ははは、そっか」
「それに助けてやりたかったし。喜んでもらえたし。一回だけならいいかって軽く了承したんだ。だけどまさかお披露目にまで連れ出されるとは思ってなかったぜ」
「事件絡みかと思った」
「いいや、まったく」
「じゃあなんでこんなところに?」
絡まった毛先を櫛で整えていると、彼がぶすっとした顔をしていることに気付く。どうしたと問えば言いづらそうに口を開いた。
「いやだってさ・・・女性モデルしかいねぇ部屋にいられねぇよ・・・。母さんも分かってるから時間になったら戻ればいいと言ってくれたし。だから隠れてただけ」
「ああそっか!」
「しかも無名だし。視線が怖かったし・・・気まずすぎてな」
「なるほど」
「とりあえずこのブランドは今後、今日登壇するモデルたちに引き継がれる。だからこそっといなくなってた方がいいかなって」
彼も彼で色々大変な現場にいたのだなと思った。難儀だと感じ頭を撫でれば、彼は苦笑していた。
「この格好が名探偵だって知っている人は?」
「デザイナーと母さんだけ」
それならばこの女性モデルの扱いを上手くやってくれるだろうと安心し、準備が整ったことを伝えた。
「サンキュ」
「どういたしまして。そう言えばその服」
「ん?」
「オレ買い取るから伝えといて」
「えっ、なんでだよ」
そこは聞かないでおいてもらいたいが、どうやら意図は伝わってしまっているようだ。だって表情が怪しんでいる。
「・・・わかったよ」
「え?!」
「・・・ただしオメーに渡すかどうかは考える。どうせ変装に使えるとか思ってんだろ?だけどこのブランドに変なイメージがついちゃ困るから考える」
「あー・・・なるほど。うん、えーと、変装では使わないけど」
どうやらわかっていなかったらしい。またこの服を彼に着てもらってあれやこれやをするとは思わなかったのだろう。ただとりあえず勘違いをしてもらったままにしておいて、チャンスを窺ってもいいか。そう思い、これ以上は何も言わなかった。
「あ、やべぇ・・時間だ」
小窓から舞台を見た彼はそう言った。自分は幕が閉じるのを待つだけだから、まだこの部屋に居てもいいだろう。
「名探偵、また」
「・・・ああ」
ドアの方へ歩き、部屋から出て行こうとした彼の顔が少し赤い。パーティーが終わった後の事を考えていたのだろうか。でも自分だって楽しみにしているのだ。
「あ、そうだ。オレの名前」
「・・・知ってるよ。呼ぶのは・・・部屋で、な」
その言葉にドキリとし、渡されたカードキーを思いきり握る。照れ笑いをした彼はじゃあと言ってそそくさと部屋から出て行ってしまったが、心には期待しか残らなかった。
さて、この場から登壇する彼を見ようか。そう思い、視線を舞台へやった。

「ストラップのボールの・・・んっ、ちょっと・・・あっ」
話を聞けと行為を急かす自分に制止の声がかかるけれど今更手を止めることも出来ない。だって可愛すぎて。
部屋でソワソワと待っていた自分の前に現れたのは女装ではない彼本人。もちろん女性の格好をしたまま来るとは思っていないし、心が通じ合い恋人になれた彼の姿をようやく見ることが出来て感動したくらいだ。ドアを開けて入ってきた音を聞き窓辺から走って思い切り抱きしめた。その際にきちんと鍵は閉めて。オートロックだけど、内側の施錠はしっかりと。
そして彼が苦しいと言うまで柔らかな唇を堪能し、ベッドへ引っ張っていった。
「ボール・・・?ああ、うん、あれね。ってオレだってバレてたんだ」
「っ・・・見たらすぐにわかった・・・あっ、止めてっ」
「敏感だなあ」
あっという間に衣服を脱がし、下着一枚にした彼の姿を見たら自分のソレはすぐに立ち上がる。正直だなあなんて呆れつつも、すぐにいれたりなんかしない。ゆっくり準備して気持ちもナカも解して、そして。
想像だけで達しそうになってしまった。やばいやばいと一呼吸。
「そうだ。そのストラップ・・誰からもらったの・・?」
「・・・それ、止めてくんねぇから・・教えねぇ・・」
そんなことを言われてしまえば、仕方がない。慣れないパンプスを長時間履いていた足指を労わってキスをしていたけれど、一度きちんと話を聞こう。
持っていたつま先をシーツにそっと置く。そうすれば彼は両腕を広げこっちにこいというサインを。
「かぁわいい」
「・・・やること早いっつーの」
「えへへ、堪能したくて」
「それに、か、快斗も・・・服脱げよ」
名前は知っていたけれど、音にして呼ぶのは初めてで。恥ずかしがりながら名を呼んでくれる彼が可愛くて仕方がない。
「新一」
「なんだよ」
「呼びたかっただけ」
「・・・恥ずかしい奴」
リクエストに応えてシャツの裾を持ち上げて素早く脱ぐ。それをベッドの端に投げている間、彼の視線はずっと自分に注がれている。
「なぁに?」
「えーと・・・」
「何かあるなら言ってよ」
「・・・当たり前なんだけど・・・おんなじ人間なんだって・・あ、いや、別に宇宙人だとか思ってたわけじゃねぇよ・・?なんか実感が無かったって言うか・・・うーん、なんて言ったらいいのか」
「くくくっ、あーまぁその気持ち、わからなくもない。オレもそう思うことあったよ」
けれど少し前に海外のホテルで一夜を共にしたじゃないか。というと語弊があるけれど、確かにあの時は名探偵の前では彼に成り代わっていたし。素顔で肌を晒すのはこれが初めてだ。そして彼も。
ボトムスを脱ぎ彼と同じく下着一枚になると、息を飲む音が聞こえた。緊張しているのは自分も一緒。だから安心して欲しい。
「はぁ・・・夢が叶った」
「夢?」
「新一に触れる事」
「・・・」
「で?ストラップがどうしたって?とりあえず大事そうにしている名探偵を見てオレは嫉妬してたんだけどねぇー」
正直な気持ちを伝えて欲しいと思う代わりに、自分自身も隠すことを止める。そんな風に思いながら、広げていた腕に甘え素肌に身を寄せた。ああ、暖かいなあ。なんて心地良いのだろう。それに加えて欲求も湧いてくる。
「嫉妬・・してたんだ・・そっか・・・。それな、探偵団のみんなからもらった大切なもので。だから失くせねぇと思って焦っちまったんだ。それを拾ってくれたのがまさかキッドだったなんてな。だけどまあ・・」
「ん?」
「指紋くっつけて返却するとは思わなかった」
「あ・・」
「あっ、て・・・なんも考えてなかったのか。油断し過ぎ、くくく」
言われてみれば確かにそうだった。バレてはいないことを前提に行動したからだろうけど、普段じゃあそんなことする筈もなく。やっぱり彼の前では気持ちが緩んでしまうのだろうなあと改めて感じて。
「なんでつけてねぇの?」
「金具を失くしちまって。だから自分の部屋に置いてある」
「じゃあ、オレが直すよ」
「うん、お願いする」
彼が言いたかったのは指紋の事。だけど直して欲しいとまでは言うつもりはなかったのだろう。だから安心したような笑顔が目の前で見られてこちらも嬉しくなった。指紋なんて恋人になった今なら悩むことではない。彼だって自分が油断していたことに苦言を呈していたわけでは無いのだから。
「始める前に他に言うことある?」
「え?」
「きっと真面目な話できなくなるし。オレも新一も」
「・・・」
顔を少し起こして彼の表情を窺えば、首を小さく横に振る。ああ、始めるなんて言わない方が良かったかな。途端緊張の色が表情に乗っている。だけど好きな人の意思を確認したいと思うのもこの雰囲気を壊したくはなかったからで。
「快斗」
「緊張してる?」
「してる・・・でも、」
「でも?」
「オメーの夢が叶ったって言ったのと同じで、俺もなんだから」
緊張。不安。でも恋をしている嬉しさ。それ等が綯交ぜになった複雑な表情を顔に乗せ、新一は笑みを浮かべる。
もしかしたら自分も同じ表情をしているのかな。そう思うとお揃いだねって口から零れて。
「抱きたい」
「・・・うん」
「新一をぐちゃぐちゃにしたい」
「・・・う、うん・・」
「新一をどろどろに溶かしていっぱい包まれたい」
「・・・・」
「新一のナカに入ってたくさん犯し・・いてっ!」
「これ以上は言うな!恥ずかしい!」
後頭部を殴られた。もちろん力は加減していたけれど。
でもなんだか自分たちらしくて小さく笑いあった。

美味しそうだなあと思うところを数えるよりも、頭のてっぺんからつま先まで余すところなく舐め尽くした方が早い。それに彼だって刺激を一つ一つ拾ってこんなにも感じてくれている。
「あっ・・・」
汗をかいているのを拭いてあげた時の鎖骨を舐め、下方へ舌を出しながらゆっくりなぞる。ほんの少しの刺激でも立ち上がった乳首は可愛らしい色をしていて。その震える頂を舌先で突けばビクッと身体を震わせた。
「っあ!」
じゅっと入念に吸っては突いて窪ませる。次第に硬くなる乳首は突いても窪まなくなり反発するようになった。
「んっ・・・」
「はぁ・・・エロ・・」
「っ・・・」
自分の舌でこんなにも反応してくれる。妄想していた彼よりもずっと感度が良いからたまらない。
今彼はどんな表情をしているだろうと気になり、上半身を起こして視線をずらす。そうすれば片腕で顔を隠していたのだ。
「顔、見せてよ新一」
「っ・・・やだ・・・はずかしい」
「もー、そんなに可愛いことしないでよ」
してねぇと小さく零す彼の腕をとれば、持たれるとは思わなかったのか腕をビクリと揺らして。怖くないから。そう囁きながら腕にキスを施す。
「こわくは・・ないけど・・・」
そう言った新一は緩慢な動きで腕を顔から外し、目の前にいる自分を見つめた。顔は真っ赤で、額には滲む汗。
「けど?」
「いたたまれねぇ・・・」
「ふふ、うん。そうかもな」
羞恥心はどうしたって湧いてくるものだ。自分だってそうだから。だけど恥ずかしさを感じていることよりも大切なことがあると思えば、なんのことはない。さっきだって自分は夢中になって乳首を舐めていたわけだし。だったら。
「恥ずかしさなんて忘れさせてあげる」
首を傾げる姿が可愛い。何を言っているのだろうと疑問符が浮かぶ頭を撫でて、おでこにキスをひとつ。耳と目尻、頬へと口を移動させて、最後は柔らかな彼の唇に。
「んっ」
恥ずかしさを感じている隙間を快楽に染めてしまえばいい。溺れて、這い上がることのできないほどの快感を。
妄想がゾワリと背筋を撫で、それが後押しとなったように彼の咥内をぐちゃぐちゃに掻きまわす。
「んっ、んっーー!」
舌を[[rb:捉 > つか]]まえ、じゅるっと吸い上げれば、彼の手がオレの肩をギュッと掴んでいて。ああ、食べたいなあ、なんて思って柔らかく熱い唇をぱくりと咥える。上唇と下唇を交互に舌で弄れば、くぐもった喘ぎが自分の口の中で暴れた。
「はぁ・・・しんいち・・」
「はぁ、はぁ・・・」
唇を離すと彼の口元はびしゃびしゃ。夢中になってしまったと苦笑してシーツで拭き取った。
「かいと・・・の・・」
「ん?」
「さわりたい・・」
「っ・・・うん、触って」
恥ずかしいと感じる壁を壊せただろうか。そう思うのは彼がオレの股間の方へ腕を伸ばしているから。
「届かねぇ・・」
「っ・・・うん、ちょっと、待って」
亀頭に触れた指先でくすぐられる。いまだ自分も触れていないのに積極的な彼に翻弄されそうになる。
下着を脱ごうと上半身を起こし膝立ちになれば、彼も起き上がって股間部を追いかけてくる。急かされているようで、なんだかとてもドキドキしてしまい、ちょっと待ってと再度焦った声が出てしまった。
「快斗・・・すげーたってる」
「そりゃそうだろうよー」
わたわたとゴム部を引っ張り解放を待つ陰茎を取り出そうとするけれど、彼がそれを制止して。何故と思っている間に、四つん這いになった彼の口がパクリと下着ごと亀頭を咥えた。
「っ・・・!」
布越しで変な感覚だ。ジワリと布が濡れていき、もぐもぐと口を動かす彼の挙動にビクッと腰が揺れる。下を見れば、一生懸命それを食む動作が見えて胸がキュンとする。
「しんいち・・・っ」
名を呼べば彼はそこから口を離し、同じ大勢をとる。そしてにっこり微笑み首をこてんと傾け。
「仕返し」
「え?なんの?」
「口元びちゃびちゃにした仕返し」
「えぇ~」
まあ別にいいのだけど。もう少し咥えていて欲しかったなあなんて言わない方がいいのかな。迷いながら彼の下着の中に手を入れて、臀部を揉む。滑らかな肌が余りにも気持ち良くて「こらっ」という声を無視し堪能すれば、彼も自分の尻の方に手を回して真似をした。
「かてぇ・・・」
「あははは。新一のはモチモチ肌」
「尻に筋肉つけよ・・・」
「それはダメー。もっちり柔らかいままでいて?」
悔しいなあとこぼす彼の声が耳元で聞こえてふふとまた笑いが零れる。だけどいつまでもこんなことをしていたら進めやしないと思い、ゆっくり下着をおろした。そして彼も同じようにオレの下着を脱がす。
そうすると彼は向かい合った状態のまま、オレの下腹部を凝視して。
「なに?」
「・・・」
「ん?」
「でけぇ・・・」
嬉しい誉め言葉だ。だけど彼の表情は引き攣っている。
「大丈夫だよ、入るようにちゃんと解すから」
「っ・・・!い、いや・・・えーと・・」
恥ずかしさの壁は壊せたと思ったけどまた顔を真っ赤にする。ただ否定の言葉はないから、自分に愛される覚悟は出来ているのだ。
直球過ぎる、と彼はブツブツ言いながらも任せると付け加え自分を見て。その視線に頷き、同意を示せば照れ笑いをした。
そして立ち上がっている互いの陰茎を一緒に握り、ゆっくり上下に扱く。
「っ・・・」
「んっ・・」
「新一も一緒に握って?」
言われた通りに彼もおずおずと二つの陰茎を握り、自分の動作を倣えばビクリと一つ。熱を持つソレが一続きになっている素肌とは違うもののように思えて。なんだかおかしな気持ちになる。それに段々と滑りが良くなっていって、どちらの先走りかもうわからない。
「あっ・・・」
「ね、きもちいい・・・?」
「ん・・・きもち、いい・・・こんなの初めてで、感覚が・・・っ・・よくわかんない・・」
「うん、オレも・・・」
溢れる先走りが握る手を伝い小さく卑猥な音を立てる。彼の掌も熱くて上下に扱かれているだけで溶けそうだ。
「ふっ・・・ん・・」
気持ちよさそうに夢中になって根元から亀頭の間を行き来する彼の手が段々と早くなり、膝立ちが辛くなってきたのかオレの肩口に額を置いた。
「かいとっ・・・」
「しんいち・・きもちいいよ・・っ」
互いの手の動きはバラバラで予測のつかない刺激に背筋が痺れ始める。達するなら一緒がいい。そう思い互いの亀頭を交互に親指で刺激した。
「あっ・・!」
「んっ・・・しんいち・・」
「やっ・・いっちゃう・・・」
先走りを二つの亀頭に塗り込んでいると、いつの間にか彼の手は止まっていて。無意識にギュッと陰茎を握り達しそうな衝動を抑えている。
「いこ・・・しんいち・・」
「んっ・・・」
大丈夫だから。新一の耳元で囁き解放を促せば、小さくごめんと言って陰茎から手を離した。両手をオレの肩に置いたのは力加減が利かず陰茎を握りしめてしまうことを避けたからだろう。
「っ・・・かいと・・・んっ」
いいよと言って、互いのソレを思いきり扱き始める。ビクッと揺れる身体が倒れてしまわぬようしっかり支えながら、彼の鈴口を親指で押せば。
「んあぁっ・・・!」
「くっ・・・」
びゅっと熱いぬめる液体が手元で弾け飛んだ。それは腹や太腿にも飛んでツーっと下へ流れていく。
「はぁ・・・はぁ・・もっ・・この体勢、きつ・・・」
そう言った新一はぺたんとシーツの上に座ってしまった。肩を掴まれていた自分もそれに引っ張られ、じゃあと思い彼の身体をシーツに横たえさせた。
「いっぱい出たね」
「ん・・・オメーも」
掌に少しだけ溜まる精液を彼の孔に塗ろうと、もう片方の手で膝を固定させる。そうすれば彼はほんの少し驚いた顔を見せ。
「っ・・・」
「慣らすよ?」
「う・・・ん・・」
きっとされることはわかっている。シーツを握りしめる手がほんのわずかの緊張を伝えているけれど、小さく彼が微笑むから頼られていると感じた。
キュッと閉じている孔に先ほど混ざり合った精液を塗り、力が緩むように優しく撫でる。ああでも、やっぱりこの量じゃ足りないかもしれない。この部屋に来る前にこっそり用意していたものを思い出して、新一の顔を見ればじっとこちらを見つめていた。
「快斗?」
「準備が良すぎるって怒らないでね」
「え?」
予めそう言っておけばきっと笑ってくれるかなあと想像しながら、身体をほんの少し移動させる。そして彼の頭が置かれた枕の下に手を突っ込んで、小さなケースを取り出した。
「なに?」
「ローション」
「・・・準備・・良すぎ・・」
「うん、その通り」
「いつ?」
「実はこっそりコンビニに買いに行っておいた」
そうなのかと言いながら何とも形容しがたい表情を見せたけれど、文句は言わなかった。それに少し頬に紅が走ったような気がして。
「考えて・・くれてるんだもんな」
「新一?」
「初めて・・・だから」
「うん、気持ち良くなってもらいてぇもん」
初体験を好きな人と。そして最高の初めてにしたい。意図を汲んでくれた彼に優しく微笑めば、照れ笑いをしながら続きをしてと言った。
膝を立てたままで居てくれた彼の脚の間に入り、キャップを開ける。掌にたくさんローションを溜めて小さなケースはおざなりにベッドの端へ放り投げた。
「少し温める」
「ん・・・いいよ、大丈夫」
「冷たいよ?」
首を横に振り「早く」と急かすのはきっとこの間に耐えられないからかもしれない。彼がいいならと思いつつも、ひんやりする液体を少しでも温めようと膝にキスをし、内股にもキスをしてこの時間を誤魔化す。
「っ・・・」
気休めかもしれないけれど、少しだけ温まったような気がする。だから孔に指を添えてローションをそっと塗り込んだ。
「んっ」
さっきはまだキュッと絞まっていたそこは緊張が和らいだのかほんの少しだけ柔らかくなっている。まずは一本だけと思い、中指をゆっくり挿入していく。ローションのお陰か、入り口は抵抗なく指を迎え入れてくれて。
「んっ・・・快斗・・」
「痛くない?」
「いたくは・・ない・・」
ぐちゅりと粘着質な音が指を奥へと進める度に聞こえる。ヒクヒクと動く入り口はまるで誘われているようで。
ローションの量が多かったかもしれない。けれど抵抗なく受け入れる内壁は熱くうねり始めて。
「っ・・・」
「あっ・・・」
視覚と指の感覚がやばい。包まれている中指がギュッと締め付けられて、早くここに自分のを入れて感じたい。だけどまだ、と爆発しそうな感情を押さえ幾許か緩んだ内部に合わせてもう一本指を増やした。
「あっ、あっ・・・!」
「あー・・・やべぇ・・・」
二本の指をバラバラに動かし内壁のあちこちを刺激しているとぷくりと膨れた個所を見つけた。ああ、ここは。そう思い指の腹で撫でれば新一が大きく身体を揺らす。
「っあ!な、に・・」
「ここ、前立腺」
もう少し強く押すことが出来たら。無意識に指をもう一本増やし、関節を小さく折り曲げながら弾力のある個所を力強く押す。
「――っあ!あっ、やっ、なに、んぁっ!」
柔らかくなった入り口が三本の指を簡単に飲み込んでいる光景はあまりにもたまらない。前立腺を突いては、指で挟み揉みこむ。
「ひっ・・・あっ、かい・・・と・・・!や、だっ・・・!」
「気持ち良くない?」
「んっ、ち、がう、けど・・・・ぁぁっ・・むり・・・いっ、く・・・!」
そうすれば内壁がギュッと締まり指が動かせなくなった。ローションのぬめりと収縮が激しく、指に受ける刺激なのに思わず自分も身体が揺れる。
「っ・・・」
それに勢いよく出た精液が自分の頬にびしゃっと飛んできて。
「はぁ・・はぁ・・・」
「新一・・エロ・・」
もうだめだ。この状態は続けられない。早く、ナカに入りたい。
指を孔から引き抜き、くたりと寝そべる彼の枕元に再度手を伸ばす。そこにはローションの他にコンドームを置いておいたのだ。本当は新一につけてもらいたかったけど。彼が自分の陰茎にゴムを装着する光景を妄想しつつ、袋を破る。一度達したのに、そんな事は無かったようにそそり立つソレに装着した。
「新一、いれるよ?」
「ん・・・」
ほんの少し呆けている彼を上からじっと見つめれば、それに気づいた彼が腕を上げて首に手を回す。自分の影になった彼の表情は微笑んでいて。
「いれて・・・大丈夫だから」
「うん」
「でもその前に、キス、して・・」
可愛いおねだりに胸がキュンとする。それが嬉しくて彼の頬に自分の頬を擦りつけた。
「かいと・・キス・・」
「ふふ、うん」
焦らしたつもりは無いけれど、急かされて柔らかな唇にキスをする。チュッとリップ音を鳴らしながら何度も軽く唇を合わせていれば、新一は口を開けた。誘われるまま咥内に舌を入れ歯列をなぞり口いっぱいに食む。ああ、このまま入れてしまえたら。そう思い、腰を少し下ろして彼の孔に亀頭を宛がった。
「んっ・・・」
難なく先端をパクリと咥えた入り口は内部へ誘導していく。これだけでも気持ちいいのに、この先は一体何が待っているだろうと想像するだけで、もう一回り大きくなった気がした。
「んっ、んっ・・」
咥内に溜まる唾液を思い切り吸い上げるのと同時に、ぐちゅりと鳴る孔の奥へ一気に挿入すれば、陰茎をキュッと締め上げられ。
「っアーーー!」
挿入の衝撃でキスをしていた唇が離れ、彼は仰け反る。自分も熱い粘膜を感じて身体がぶるりと震えた。ゴム越しでもこんなに気持ちいいのに、外したらどうなるだろう。そんな考えが起きるけれど、それは今じゃない。
身体を起こして彼の膝を持ち抽挿を始めれば、内壁は搾り取るように緩急をつけて蠢く。
「っあぅ・・あっ、んっ・・・」
「しんいち・・・っ」
ビクビクと動いてしまう身体を抑えるためか、新一はシーツをギュッと握りしめていて。抱きしめたいけれど、今は無理。気遣うことも出来ないまま、何度もナカを突く。
「ひっ・・あっ・・あ、かい・・・と・・・んっ」
穿つ度に新一の声が跳ね、喘ぎは止まらない。ああ、こんな声は初めてだ。嬌声は地声よりも高く湿っていて、耳に届く度に煽られる。
「ぁアァぁっ・・・!んっ・・・」
亀頭で前立腺を突いたらどうなるかな。興味はすぐに腰の動きを変え、どの角度がいいのか探し始める。
「んっ・・・しんいち・・・」
そうすれば雁がぷくりと膨れたソコを引っ掻いて、彼の腰が浮く。
「ぁあああっ!」
「んっ・・・やば・・・」
もうどうしようかなど考える余裕は無くなった。ただひたすらうねる内壁に翻弄され、彼の気持ち良い個所を突くだけ。
「かいとっ・・あっ、好きっ・・アッーーっ」
「しんいち・・んっ・・オレも・・だいすき」
抱きしめたいその一心で上半身を傾け彼の背に腕を回すと、また角度が変わり陰茎を思いきり締め付ける。夢中になって抽挿を繰り返し、爆発しそうな感覚が身体中を襲い始めた。
奥を何度も穿てば内壁から溢れ出すローションを感じ。それが鼠径部から下に流れ、きっとシーツに吸い込まれている。
「ヒッ・・・あっ・・・い、いっちゃ・・・!」
「いっしょ・・に・・・くっ・・」
達するために激しく揺すれば今までにないほどの締め付けが。ああ、出る。その瞬間を迎え、息が止まった。
「あァっ・・・・!」
達したのと同時に彼の腕が自分を力強く抱きしめ、下腹部には溢れ出る熱い液体の感覚で満たされた。それに気づいた途端、呼吸が急に戻る。
「っ・・はぁ・・はぁ・・」
「んっ・・・」
「好き、好き、新一・・・」
最中に好きと言ってくれたことが幸せ過ぎて何度でも返したいと思ってしまう。そんな自分に小さくふふ、と呼吸を漏らして耳元で再度好きだよと囁くのだ。
「痛くなかった?大丈夫だった?」
新一の顔を見れば、目を逸らしながら恥ずかしそうに頷く。可愛い反応をしてくれるなあと思い、唇にキスをした。
「嬉しい」
「ん・・・」
「大好き」
事後の恥ずかしさが芽生え始めているのだろうか。なんだかとても大人しい。こんな彼は初めて見るし、新鮮で。抱きしめたまま過ごしたいなあと思いつつも、一度きちんと処理をしないといけないと気付き、上半身を起こす。
「抜くよ?」
「・・・んっ」
ずるっと孔から陰茎を抜くと、いまだ内壁はキュッと絞まる。これじゃあすぐにでも続きをしたくなる。だけど今日が初めてなのだし、と思いとどまってゴムを外した。
ゴムの中には自分でも驚くほどの精液が溜まっていた。

ふらつく身体を支えながらシャワールームに行き、一緒に泡だらけになった。なんだか眠そうな彼は無言のまま自分に洗われ、全身をこちらに傾けていて。任されているなあとますます嬉しくなって、頬が緩みっぱなし。そうしていると瞼を閉じて寝始めてしまうものだから慌ててバスルームから彼を連れ出したのだ。ふわふわのバスローブが気持ちいいのか、彼は今ベッドに寝そべりながら手触りのいい布を撫でている。
「オレを撫ででよ、新一」
「ん・・・いいよ」
ふふと微笑んで、汗を洗い流しサラサラになった髪を撫でてくれる。気持ちいいなあと自分までもそのまま寝てしまいそうになるけれど、彼とまだ話していたいし、恋人になったばかりのこの時間に浸りたい。
「快斗」
「寝そう?」
「ううん、少し目が覚めた」
色々ありがとうと彼が感謝を伝える。きっとシャワーとドライヤーの事を言っているのだろう。こんなに彼のことを隅から隅まで世話した経験は無く、一緒に暮らしたいなあと同棲することを想像してしまった。
「快斗はさ、あのモデルと俺が別人だったらどうしてた?」
「・・・」
「すげー嫌な質問だとは思うけど」
「・・・どっちかを諦めてた・・かな・・」
「うん、そうだろうと思って聞いた」
「だってさ、どんなに考えたって好きな人は一人しかいねぇもん・・・だから女性モデルが新一なのは当たり前なんだ」
「ふふ、うん。探られてたことにはびっくりしたけどな」
「オレだって驚いたさ」
だな、と言って苦笑した彼は万が一を考えたのかもしれない。違う人物だったら。自分が女性モデルの方を選んだら。そんな不安を一瞬でも抱いたかもしれない。
だけど別人じゃなかった。好きな人はやっぱり彼しかいない。そんな確信を持てた時は嬉しくて仕方が無かった。悩んだ時期も無駄じゃない。改めて愛おしと思えたのだから。
「名探偵とモデルを妄想しながらオナニーしたのは納得できる。うん」
「えっ」
「あ」
「オメー・・・」
ついうっかり口が滑ってしまった。怒られるかなあと思い恐る恐る彼を見たけれど、まさか顔を真っ赤にしているとは思わず。
「新一」
「・・・聞かなかったことにする。それはなんと言うか・・・俺からはなんとも言えねぇ」
言葉尻を小さくしながら枕に顔を埋めた彼の行動は可愛らしいけれど、そこまで恥ずかしがる理由に心当たりがない。
「ねぇ、まさかなんだけどさ」
「・・・・」
「もしかして新一もオレを想像して一人でえっちし・・・ぶっ!」
大変近くから枕が飛んできた。だからとても痛い。だけど彼も同じことをしていたなんて嬉しくて仕方がないじゃないか。今彼はどんな顔をしているのかなあと気になる。しかし枕を外そうと掴むがまったく動かない。ということは、投げたのではなくオレの顔に押し付けたのか。
「いいか、この話題は終わり!」
「まくあはずしえー」
「あ・・・」
声が枕のせいでくぐもりきちんと伝わったかどうかはわからないが、布の感触が顔から離れ気まずそうに眉根を寄せる表情が見えた。
「ワリィ・・・痛かったか?」
「大丈夫だよ。それに嬉しいんだよ。好きな人が同じことしてるって知れて喜ばない奴なんていないぜ?」
「・・・」
「でもまあ、この話題は終わりっ!恥ずかしすぎて困るよな」
好きだけど伝えるかどうか迷っていた昨日までの自分に言ってやりたい。今こんなにも幸せだぞって。嬉しさが抑えきれず彼を思いきり抱き締める。
「大好き!」
「・・・俺も」
「ずっと一緒に居たい。一緒に暮らす?」
「くくく、そうだなぁ、どうしようかなー。だけどオメーの事件が終わってからだろうなーって思うよ」
ああ、そうだよな。ふと彼の言葉で我に返る。けれど落ち込ませたいわけでは無い事も新一の表情を見ればわかった。
「うん、終わったら」
「終わったら一緒に暮らそうか、快斗」
「絶対だぜ?」
「おう」
それまではいつも通り追いかけっこだと付け加えて。
「じゃあ、同棲が今すぐ無理ならまたあの服着て?」
「え」
「すげー奇麗だったんだよーまた見たいなあ」
「それとこれは別だろ!」
やっぱりもう少し時間をおいてから言うべきだったなあと思いつつも、顔を真っ赤にする彼が可愛すぎて唇に噛み付いた。

おわり

【快新】暗恋者

1、
我叫工藤新一,现在正处于绝赞暗恋中。

暗恋对象是面前在班上变魔术的那个人,我们学校的人气男生,我的同班同学黑羽快斗。

我只不过是众多喜欢他的人之中一个不起眼的存在而已,要说有什么特别的地方就在于我是男的,也因此我甚至不能像其他女生那样公然表露出自己对他的好感。
我也不能像班上那些男生一样跟他哥俩好似地勾肩搭背。照理来说,在女生中如此受欢迎的男生,多少都会被其他男生羡慕嫉妒恨,但是黑羽快斗的话,没有谁会讨厌他的吧,跟谁都能打成一片。除了我。

我可以说是班上的幽灵存在,一点存在感也没有,大家大概是’咦,我们班上还有这个人’,对我有印象的也是’土眼镜’之类的。
我戴着厚厚镜片的眼镜,刘海一低头就遮住大半张脸,书一立,谁也看不到我的脸。刚开始还有人来和我搭话,看我没反应之后也不再自讨没趣,久而久之我就变成了班上的小透明。

将发红的脸贴在镜子上,冰凉的镜面也无法降温,因为这样好似真的跟他贴在了一起,这么想着身上热度越来越高,手解开皮带,伸进内裤中抚慰起来。
镜子里的人做出同样的动作,眼里满满当当的情欲
“嗯…哈…新一……”
“快斗,快斗……啊……”

嘴里胡乱地叫着,手上下动着,在脑中闪过一道白光之后达到了高潮。
“真恶心”嘴角勾起,将手放到水龙头下,冲掉手上的jing液。用湿漉漉的手抹了抹头发,又变回了原本的发型。当然也不止手上有,裤子上、地板上也有
“真脏”
用纸巾擦干净地板,把衣服都脱了扔进洗衣机,冲了个澡躺在床上开始刷起了黑羽快斗的微博,好似今日的能量满了,露出满足的笑容进入梦乡。

2、
走在去上学的路上,感觉周围的女生们情绪比起平常都普遍高昂,仔细一听,原来是临近情人节,在讨论巧克力的事情。
新一陷入沉思,众所周知黑羽快斗很喜欢甜食,送他巧克力肯定会很高兴吧,只要偷偷放在他抽屉里,不知道是新一送的就可以,然后新一送他的巧克力就会被吃掉……心跳快了两拍

新一凝神听女生讨论,想知道哪家店比较好。
“x家是还可以啦,不过果然首选还是A店!你知道吗,A店会请高坂老师哦!而且还有机会让她亲自教你做巧克力!!机会太难得啦”
“诶!就是那个很有名的高坂老师吗!太棒啦,那怎么才能让她教我们耶?”
“这个好像还没说,好像明天才会出通知,等A店官博出通知就好啦”
…………
唔……手作吗?虽然没有尝试过,但是那个高坂老师好像很有名啊,如果她来教的话,应该可以的吧。

新一掏出手机,搜了搜A店,很快就出现了一个账号,点击关注之后把手机放回口袋里
‘无论什么要求都一定要争取争取’

3.
出了出了!

新一看着A店的通知,叹了口气,转发抽奖啊…还只抽30个…对自己的运气并不抱希望的新一还是转了转

……
果然没中啊!我在期待些什么!!

新一抱头,过了一会振作起来,点进中奖名单,一个一个私信询问,用A店或X家最贵的那款巧克力能把机会转让吗?或者其他市面上什么巧克力都行

还好有人答应,新一露出笑容,但是突然想到一个问题。
原则上机会是不可以转让的,新一要去就是顶她的身份去,她。

……
困难总比办法多,啊不,办法总比困难多
新一打量了一下自己的体格,女装…可以吧

翻出老妈的衣服往身上一套,唔,只看身上的话还像那么回事。新一又买了顶假发,硅胶假胸。有点模样了。但果然脸部线条还是要修饰一下。

新一沉默地放下手中刚买来的化妆品,拿起卸妆水开始卸妆,果然不是看了两三个美妆视频脑子会了手就会了。

没有办法

“喂,志保吗?能不能帮我……”

“好了,看看”短发女生语气冷淡

“哇,志保!不愧是你!”新一看着镜子里360°哪里都看不出男人影子的自己

“……你自己没发现还有哪里不对吗?”

“啊?志保的技术很好啊,帮大忙了!多谢啊”

“别对着我说话,看着镜子说”

“干嘛看镜子说……志保……”新一本来开心的脸又垮下来“怎么办啊声音”

宫野志保轻叹一声“没办法啊,博士大概两天可以做好变声器给你”

“啊,两天啊。可是明天就要去了欸”

“……几点”

“晚上7点开始”

“我会一起帮博士通宵做”

“呜哇!谢谢志保!!”

“我可没说是免费的”

“知道啦知道啦,志保想要什么,发链接给我,毕竟我买的你又不喜欢”

宫野志保垂下眼“让女士和上年纪的博士熬夜,你就做好钱包出血的准备吧”

“……我做好心理准备的”

宫野志保看着眼前不说话就是活脱脱一个顶级美女的新一,你究竟愿意为他做到什么地步呢……宫野志保把握紧的手放进口袋里“自己把妆卸了,明天我再来”不待新一回答就出了门

“真是笨蛋啊……”宫野志保的声音轻不可闻,也不知道是在说谁

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您并非一定要受此限制,博客的一个奇妙之处在于,随着我们学习、成长和与他人互动,它们是会不断演变的,不过如果知道从何处入手以及为何开始,这将会颇有益处,并且明确您的目标可能会激发您写其他一些文章的灵感。

不知道如何开始?只需写下您脑海中闪现的第一件事即可。Anne Lamott 是一位作家,大家都喜欢她写的书。她指出,你要允许自己写出“蹩脚的初稿”。Anne 提出了一个很好的观点,先开始写,之后再去考虑如何编辑。

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